1947年4月5日、岡山県勝山の道路沿いに、投票所へ入る日本人有権者の列ができた。オーストラリア戦争記念館が所蔵する写真P01205.026は、場所、日付、待機目的を明記している。敗戦後の新制度のもと、4月には約一週間ずつ間隔を置いて、衆参両院、都道府県知事、地方自治体の選挙が続いた。写真の列は「戦後初の選挙」という一言ではなく、制度が道路上の順番へ変わった瞬間を残す。

この地域では英連邦占領軍の監督班が選挙運動、投票、開票を見守った。つまり有権者は投票所の入口だけでなく、占領下で再編された行政手続きへも並んでいた。写真から各人の待ち時間や投票先は分からない。分かるのは、山間の町で人々が道路に沿って順序を作り、一人ずつ投票空間へ入ったことだ。

民主主義は憲法や法律の文章だけでは作動しない。名簿、投票用紙、記載場所、監督者、そして入口で待つ人の身体が必要になる。勝山の写真が具体的なのは、戦後日本の大きな制度転換を、投票所前の細い列という人間一人分の幅で示しているからである。