2010年、ニューヨーク近代美術館の《The Artist Is Present》で、マリーナ・アブラモヴィッチは三か月間、一日6時間、無言で椅子に座った。観客は向かいの一席に座って彼女と見つめ合うため、数千人規模の列をつくり、中には一晩中待つ人もいた。展覧会全体の来場者は85万人を超え、75日間に実際に向かいへ座れたのは1,545人とされる。一人の参加者が7時間座り続けた日には、後ろの人々が怒ったが、やがて待つこと自体も作品の一部だと理解した、と本人は振り返る。通常の美術館では列の先に作品がある。ここでは列の進み方を決めるのも、その日の作品に参加した観客だった。沈黙の一席を長く占める自由と、後ろで待つ多数の時間が同じパフォーマンスの内部で衝突した。
米国 · 2010年
六時間動かない芸術家と、一晩待つ観客
