2016年3月の寒い木曜日、ブエノスアイレスの展示施設ラ・ルラルに、150人を超える総合格闘家が集まった。目的は試合観戦ではない。リアリティー番組『The Ultimate Fighter Latinoamérica』への出演と、その先にあるUFCとの契約を目指す選考だった。クラリン紙の現地記事は、朝8時から到着した男女が競馬場近くで列をつくり、正午の開始を待ったと記録している。
列の先にすぐリングがあるわけではなかった。参加者はまず用紙へ記入し、写真を撮り、体重計に乗る。格闘技では体重階級が対戦条件を決めるため、計量は夢を審査へ変える最初の関門だった。中には、教え子の付き添いで来たものの、列で待つうちに自分も受けてみようと決めた指導者もいた。
この行列で人々が待ったのは、勝利ではなく「試される順番」だった。普段は互いを倒す技を磨く格闘家たちも、受付では同じ書類と体重計の前へ一人ずつ進む。競争の世界に入る入口ほど、意外なほど事務的な列になる。
