レソト政府の電子政府事業は、国民IDを得るため郵便局庁舎で並ぶ状況に、公式サイト上で「さようなら」と呼びかけた。新しい市民向けポータルは、期限切れまたは期限が近い国民IDをオンラインで更新できるサービスとして案内され、「列は不要」と掲げる。ここでデジタル化の対象になったのは書類だけではない。申請者が窓口へ移動し、開庁時間に合わせ、順番を待つ時間そのものだった。

しかしオンライン化は、身元確認を消すわけではない。政府ポータルでは、利用者のアカウントを検証済みの国民ID、電話番号、電子メールへ結び付ける。2026年に始まったデジタル・サービスIDの試験事業でも、有効な国民IDと登録済みSIM、さらに生体情報登録が必要とされた。最初の試験は約1万人を対象とする計画だった。

この列の特徴は、行政が行列を単なる不便ではなく、サービス設計上の処理対象として名指ししたことにある。物理的な列を短くする代わりに、本人確認はカード、通信回線、生体情報の連鎖へ移る。待合室から解放されても、端末や通信、既存IDを持てない人が新しい入口で待つ可能性は残る。政府の「列なし」という言葉は、改善の約束であると同時に、誰がオンラインの入口へ到達できるかを測る基準にもなる。