1917年4月29日、フランス北部ビュルクール付近で、一列になったオーストラリア兵たちが写真に収まった。順番を待っていたのは食事でも補給品でもない。故郷オーストラリアの連邦選挙で投票するためだった。オーストラリア戦争記念館に残る写真の説明によれば、写っているのは第21大隊の兵士たち。列の先頭では一人の兵士が氏名を記録され、投票用紙を受け取ろうとしている。
同大隊は当時、西部戦線のビュルクール地区、ヴォー=ヴロークール近くの前線支援塹壕に配置されていた。そこで行われたのは、戦場と無縁な儀式ではなかった。軍務を続ける人々にも投票できるよう、オーストラリアでは1917年に戦時の不在投票に対応する法律が成立し、通常と異なる投票用紙が用意された。写真に写る名簿への記録という小さな手続きは、海を隔てた有権者を国内の選挙につなぎ直すためのものだった。
この列を眺めていると、不思議な二つの時間が重なる。前線の時間は命令と戦闘の都合で動く。選挙の時間は遠い国の政治日程で動く。その双方が、兵士一人ずつの順番のうえで交わった。兵士たちが何を考え、誰に投票したのかは写真から分からない。分かるのは、戦争のただ中でも一票は自動的には投じられず、誰かが名前を確かめ、紙を渡し、次の人を呼ぶ必要があったということだ。
前線の兵士にとって投票所は戦場から離れた市民の空間ではなかった。軍服のまま並ぶ姿は、戦争を続ける組織の内部にも一票ずつ処理する時間が設けられたことを示す。
