1993年5月30日、カンボジアの遠隔農村部で、有権者は白い国連トラックを利用した投票所の前に列をつくった。オーストラリア戦争記念館の写真記録には、人々がはしごを上って車内へ入り、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の兵士が身分証明書を確認する様子が残る。建物のない場所でも投票を成立させるため、投票所そのものが移動できる設備になっていた。

この列がほかと違うのは、順番を待つ人々だけでなく、投票箱と係員のいる空間まで車輪で運ばれてきたことだ。選挙初日には約220万人、登録有権者の46%が投票し、プノンペンのオリンピック・スタジアムなどでも早朝から長い列ができた。国連監督下の選挙を支えたのは、制度だけでなく、はしごを一人ずつ上るという具体的な順序だった。