1970年の大阪万博では、アメリカ館に展示された月の石が大きな注目を集めた。前年のアポロ11号による月面着陸は、人類が地球の外へ足を踏み出した出来事だった。その成果を地上で確かめようと、来場者は展示を見る順番を待った。宇宙の話なのに、入口ではきわめて地球的な行列が必要だった。

展示品は小さい。だからこそ、多くの人が一度に眺めることは難しい。巨大な会場と国際的な技術競争の物語は、最後には目の前の人が動くのを待つという身近な動作に縮まる。遠くの月から持ち帰られた物質を見るために、地上の時間を差し出すという取り合わせが鮮やかだ。

ただし、万博の全来場者が月の石を見たわけではなく、待ち時間も日や時間帯によって異なった。展示への熱狂を一つの数字で代表させるのは慎重であるべきだ。それでも、この列が教えることは明快だ。人類が宇宙へ到達しても、その驚きを分け合うには、まだ一人ずつ順番が必要だった。

月の石を見る列では、地球外から持ち帰られた標本より、そこへ近づく人間の動きの方が長かった。展示ケースの小ささが、宇宙開発の成果を一人ずつ見る順番へ変えた。