2020年7月、ナイロビのキベラでは、給水車が来る道路に家族ごとのジェリカンが並んだ。容器は白いチョークで区切った区画に1メートル間隔で置かれ、その後ろで女性や子どもたちが無料の水を待った。新型コロナウイルス流行下で、人の距離を保ちながら順番を見える形にする工夫だった。
キベラには安定した給水を持たない世帯が多く、水を買う費用が家計を圧迫していた。地域団体SHOFCOと支援組織による給水は、単に喉を潤すだけでなく、限られた現金を別の生活費へ回す余地をつくった。しかし、配給の場では列を保つ担当者が争いを止めなければならないほど、水は切実な品物でもあった。
この列で先に順番を取るのは、人の身体ではなく、名前を書いた黄色い容器である。入れ物を整然と置くことで、家族の持ち分と感染対策の距離を同時に示した。水の行列は、都市インフラの不足だけでなく、住民が混乱の中に公平な順番をつくる知恵も映していた。
