2024年7月、ケニア西部キシイの行政サービス拠点フドゥマ・センターには、国民IDを求める若者が数百人集まり、列をつくった。ところが高等裁判所は、新制度「マイシャ・ナンバ」に基づくIDカードの発行を一時停止していた。申請を受け付ける窓口は動いていても、その先の印刷工程が止まり、待ちは長くなると見込まれた。
国民IDは単なるカードではない。就職、金融、各種行政手続きへ入るための鍵になる。政府は前月、約40万件の滞留を30日以内に解消すると発表し、24時間体制での印刷を進めていた。その直後の差し止めは、若者が人生の次の手続きへ進むための列を、法制度上の判断と結びつけた。
この行列の固有性は、窓口の処理速度だけでは説明できないことにある。列の先頭で書類を出せても、カードを作る全国システムが止まれば待ちは解消しない。目の前の人数と、見えないバックログが同じ一列に重なっていた。
