1985年の科学万博―つくば’85では、人気パビリオンの前に長い列ができた。開幕から一か月の時点で、10館が3時間以上の待ち時間を記録したと当時の新聞資料は伝える。茨城県の回顧資料も、住友館や富士通パビリオンなどに長蛇の列ができたことを確認している。

来場者が待ったのは、コンピューター映像、ロボット、通信技術が見せる「21世紀」だった。現在なら画面で瞬時に共有される新技術が、当時は特定の建物の内部に収められていた。未来を見る入口が一つしかなければ、好奇心は建物の外で三時間の長さになる。

この万博では、待ち時間そのものが人気の指標として読まれ、さらに人を引き寄せることもあった。行列は展示を見るための障害である一方、「そこには並ぶ価値のある未来がある」という広告にもなった。科学技術を効率化の象徴として展示する会場で、最も人間的な非効率が生まれたことが、この列の面白さである。