シンガポールの公営住宅BTO(Build-To-Order)では、申込者が会場へ早く着いた順に住戸を選ぶわけではない。HDB(住宅開発庁)の公式案内によれば、コンピューター抽選が申込者へキュー番号を割り当て、対象者はその番号順に住戸選択へ招かれる。2013年の政府資料も、当時の申込みがHDBのオンラインサービスやセルフサービス端末を通じて行われていたことを示す。

ここでの列は歩道には見えない。抽選がつくる行政上の順番である。希望する団地や間取りに申込みが集中すれば、番号が呼ばれるまで待っていても、選択時には希望住戸が残っていないことがある。徹夜や早朝到着の技術ではなく、資格確認と抽選が先着順に代わる公平さを設計する。

住宅は暮らしの器であり、同じ団地でも階、向き、間取りは家族の将来に影響する。だからキュー番号は単なる受付票ではない。物理的な行列を消した制度が、家を選ぶ順序を明確な「見えない列」として残している。