2021年5月、ベイルートの薬局で客が列をつくる様子をロイターの写真が記録した。レバノンでは外貨不足と補助制度の行き詰まりから医薬品の輸入が滞り、翌月には薬局が抗議のため一斉休業した。ある住民は必要な薬を探して10軒を回り、開いていた2軒にも在庫がなかったと証言している。
この列は、列の先頭に着けば目的物が必ず手に入るという約束を失っていた。通常の買い物の列では、順番が在庫への接近を意味する。ところが供給網が崩れると、待つことは「次の店へ移る前の確認」に変わる。店ごとの小さな列の背後に、輸入決済や中央銀行の補助という国家規模の問題があった。
薬を求める行為を、人々の我慢強さの美談にはできない。必要な治療を続けられるかどうかが在庫と為替制度に左右されたからだ。写真の列は、経済危機が通貨の数字だけでなく、薬棚の空白と身体の不安として現れた場所だった。
