ボスニア・ヘルツェゴビナでは、戦後にCIPS(市民識別保護システム)が導入され、全国共通の身分証と中央登録簿が整備された。2024年、サラエボのCIPS窓口では、身分証や住民登録証明を求める市民が何時間も順番を待った。現地報道は、番号発券機があっても混雑が解消せず、窓口の処理を待つ列が続いたと伝えている。
CIPSは現在も、身分証の制度と、それを扱う窓口の通称として人々の生活に残る。身分証は銀行、雇用、行政手続きで本人を示す基礎になる。列の一人ひとりは同じ紙を求めているように見えても、その先には別々の用事がある。
この行列が映すのは、統一された制度と、地域ごとの窓口能力の差だ。国全体で同じ書類を使えるようにしても、申請や受取りは現場のカウンターで一件ずつ進む。国家の統合はデータベースで完成しても、市民に届く最後の一歩には、まだ順番がある。
