南インドのティルマラでは、ヴェンカテーシュワラ寺院へ向かう参拝者のために「ヴァイクンタム・キュー・コンプレックス」という待機施設がある。行列を単に柵で折り返すのではなく、複数のホールへ分け、順に聖堂へ送り出す。寺院が毎日数万人を迎える規模になると、待つ場所そのものが宗教建築の一部になった。

施設内では座席、飲料水、軽食、トイレ、情報表示などが用意される。混雑日は待機が長時間に及ぶため、列は歩き続ける一本線ではない。ホールで止まり、扉が開けば次の区画へ移る。到着順を保ちながら、群衆の圧力を細かく分散する仕組みである。

参拝の核心は神像を目にする短い瞬間だが、その前の大部分は管理された待機に費やされる。効率だけを考えれば矛盾にも見える。しかし多人数が同じ聖所へ安全に近づくには、時間を建物の中へ収めなければならない。ここでは列が建築を使うのではなく、建築が列を受け止めている。

ヴァイクンタム・キュー・コンプレックスでは、待機は寺院の外へ追い出されず、建物の用途として組み込まれた。信仰の目的地へ近づく時間まで設計対象になった点に、この施設の特異さがある。