インドの高額紙幣廃止後、銀行やATMの列そのものが有料サービスになった。Times of Indiaは2016年11月、デリーの代行業者Done Thingが11月10日から一時間100ルピーで順番待ちを請け負ったと報じた。WishupやBook My Chotuなども、スタッフを列へ送り、依頼者の番が近づくと連絡する仕組みを提供した。依頼者は最後に本人確認や取引を行うが、その前の長い停滞を別の人へ移せる。

行列代行は、時間に価格が付く瞬間を露出させる。日給を失いたくない会社員や自営業者にとって、何時間も並ぶ費用は100ルピーより高いかもしれない。一方、代わりに立つ人は、自分の時間を商品として売る。順番が公平に見える列でも、待機を外注できる資力があれば負担は同じではない。しかもATMが空になれば、買った時間が現金を保証するわけではない。この事例の核心は奇抜な商売の誕生ではなく、紙幣不足が普段は見えない「待てる人」と「待てない人」の差を、市場価格として表示したことにある。

代行者は依頼者のカードや暗証番号を預かるのではなく、原則として場所を保持し、取引直前に本人へ知らせる。この分業は金融上の本人性を残しながら、身体的な待機だけを切り離した。列という仕組みが、本人に属する手続きと、売買できる時間に分解されたのである。