1990年7月1日午前零時、東ベルリンのアレクサンダー広場に開いたドイツ銀行支店では、推計1万人が西ドイツ・マルクをいち早く受け取ろうと列をつくった。東ドイツ全域でも銀行の前に長い列ができ、40年以上別々だった二つの経済が、窓口で同じ通貨へ切り替わった。
通貨・経済・社会同盟により、給与、年金、家賃などは原則一対一で換算された。預金は年齢に応じて一対一の上限があり、それを超える部分には別の比率が適用された。西ドイツ連邦銀行は事前に紙幣と硬貨を東側へ大量輸送した。
この列が待ったのは単なる両替ではない。壁の撤去より先に、財布の中で統一を経験する瞬間だった。午前零時という制度上の境界が、銀行の扉の前では人の順番として目に見える形になった。
