2022年夏、レバノン各地のパン店前に早朝から長い列ができた。限られた補助金付きアラビアパンを求める列で、ハズミエの一部店舗では「レバノン人は左、シリア人は右」と国籍別に待機場所を分けたと報じられた。
2019年からの経済危機、通貨価値の下落、小麦と小麦粉の不足が重なり、パンは日常品でありながら入手の不確かな商品になった。列の順番をめぐる緊張が暴力に発展した例もあった。
一本のパン列を二本に分けても供給量は増えない。むしろ不足の原因を、同じパンを必要とする人びとの国籍差へ置き換える。この待機は、経済危機が店頭で排除の仕組みに変わる瞬間を記録している。
