2019年8月、シンガポール・トアパヨのコーヒーショップに開いたホッケン・マン・ホッケンミーでは、昼食時の待ち時間が30〜45分になった。元二つ星フランス料理店の副料理長ザビエル・ネオが妻アリスと始めた店で、料理はホッケンミー一品だけ。ところが一度に中華鍋で作れるのは九〜十皿で、注文が重なるとすぐ滞留した。
店は午前10時から午後2時30分ごろまでに約200皿を売り、材料が尽きれば閉店した。夫婦は客を立たせ続ける列の代わりに、バブルティー店のような電子番号表示板を設置した。アリスは、その光景を診療所のようだと表現した。
人気をつくったのは有名店の経歴だけではない。三時間かける出汁と、一鍋ごとの小さな生産単位が、料理の速度を決めていた。列を番号へ変えても、次の十皿が仕上がるまでの時間だけは消えなかった。
