モロッコの港町アルジャディーダでは、16世紀にポルトガル人が築いた要塞の一角が共同窯として使われている。現地紹介は、漁師、パン職人、家庭の料理人が、平たいパンの生地だけでなく、ピザ、肉、新鮮な魚まで持ち込み、窯番が「列にある」一皿ずつを焼くと記す。多くの家庭に自前のオーブンがあっても、大きなフライパンで焼くパンなどは共同窯へ任せる習慣が残る。この待機の固有性は、人間が窓口前で立ち続けるより、家庭ごとに準備した料理そのものが順番を持ち、同じ火力と職人の手を共有する点にある。交易拠点だった要塞は、征服の遺構のままではなく、近隣の夕食を一品ずつ処理する生活設備へ転用された。