ウィンブルドンには、前売り券を持たない観客が当日の観戦券を買うための制度が、そのまま固有名詞の「The Queue」になっている。大会公式案内によれば、列はウィンブルドン・パークに設けられ、到着者には日付と番号入りのQueue Cardが渡される。このカードは単なる整理券ではなく、チケット売場に着くまで保持しなければならず、譲渡も場所取りも認められない。センターコートなどの当日券は一人一枚で、枚数にも限りがあるため、列は前夜から始まり、早朝に膨らむ。夜を越す人が使えるのは二人用までのテントで、午前6時には係員に起こされ、装備を片づけて再び列をつくる。午前7時30分からは、各ショーコートの販売枚数と同数のリストバンドが先頭から配られる。トイレ、給水所、救護、荷物預かりまで用意される一方、場所を離れられるのは飲食物の購入やトイレなど30分以内が目安だ。カードを持っていても会場の収容上限に達すれば入場は保証されない。ここで待つとは、ただ長時間立つことではない。番号、テント、起床時刻、荷物規則まで含む小さな運営制度に参加し、その日の限られた席へ近づいていくことなのである。公式案内は2026年について、センターコートの当日券を大会最後の4日間を除き毎日500枚用意し、第1・第2コートにも各500枚を割り当てるとしている。午前10時に開門し、収容上限後は退場者が出た分だけ入れる。列の先頭にいることと観戦できることの間にも、販売枚数と会場容量という二つの関門が残る。
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番号札が守る、ウィンブルドンの夜通しの列
