オマーンのニズワ家畜市場では、金曜の朝、ヤギや羊、牛が円形の売り場を順に回る。午前7時には市場が人で埋まり、買い手は柵の外側から動物を見定める。売り手は円の内側を進みながら価格を呼び、買い手の声が上がるたびに値が変わる。
これは、窓口へ進む人の列ではない。登録と健康確認を済ませた家畜を、一頭ずつ同じ円周へ送り込む順序待ちである。現地調査報告は、販売役が動物を円の中で走らせながら値を告げ、買い手が入札する仕組みを記録している。買い手はその場で比較でき、売り手は動物を止めずに次の値を探る。
ニズワでは、待つ順番そのものが市場の舞台装置になっている。動物が一周する時間が短い展示と競りを兼ね、声、視線、歩みが価格をつくる。行列がまっすぐでなくても、順序が取引を成立させる好例である。
