フェズの共同窯フェランは、家庭の生地をまとめて焼く町の設備だ。2011年の現地報道は、利用者が列をつくり、焼き上がったパンを受け取るまで待つと伝えている。窯の火は一つでも、そこへ運ばれるパンは何軒もの家から来る。
職人は窯の温度と焼き具合を見ながら、次の板を入れる。客にとっては数分の買い物ではなく、自宅で作った生地が焼かれて戻るまでの待ち時間だ。順番は、限られた窯の空間を近所で分けるために必要になる。
列の先で受け取るのは、店の商品ではなく自分の家のパンである。同じ火を借りながら、それぞれの食卓へ戻っていく。その往復が、共同窯を地域の小さな結節点にしている。
