2000年7月7日夜、ニューヨークのアッパー・ウェスト・サイドにある書店前で、人々は午後10時ごろから並び始めた。サロン誌によれば、午前0時に『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』が発売されるころ、列は約350人になった。ロイター通信も、英国と米国でファンが何時間も待ったと報じた。第4巻の発売は、子どもの本を買う行為を深夜の同時イベントへ変えた。

この列は単なる品不足ではない。内容の事前公開が厳しく管理され、発売時刻がそろえられたため、予約者も「最初に読み始める時間」を待った。書店は魔女や魔法使いの衣装、飾り付け、催しを用意し、レジが開くまでの時間を物語世界の入口にした。販売初日の英国では37万2775部が売れたと報じられ、出版が映画の公開初日のような数字で語られる転換点にもなった。

後のシリーズでは深夜販売が定番になるが、第4巻はその形式が世界規模で見えるようになった初期の例だった。読者は本の結末を知らない状態を共有し、午前0時を越えた順に別々の読書へ散っていく。約350人の列が守っていたのは商品だけでなく、物語を同時に開くための時刻だった。