2024年3月21日、インドネシア・スマトラ島のパレンバン。パリモ市場にやってくるインドネシア銀行の移動両替車を、数十人が到着の約2時間前から待っていた。現地紙コンパスの記録では、車が午前9時ごろにサービスを始めると、ラマダン中の断食を続ける人々が炎天下で順番を待った。彼らは利息を受け取るわけでも、お金を増やすわけでもない。同じ価値のルピア札を、小さな額面の、きれいな紙幣に替えに来ていた。

理由は、イドゥル・フィトリ(レバラン)にある。ラマダン明けの祝日に、親族や子どもたちへお金を贈る習慣があり、新しい紙幣は贈り物らしさを整えてくれる。額面だけを比べれば、古い5,000ルピア札も新しい5,000ルピア札も等価だ。それでも、封筒を開けた相手が受け取る印象は同じとは限らない。ここで交換されているのは通貨の価値ではなく、贈る瞬間の手触りなのだ。