ジャカルタ都市圏では、病院、行政窓口、人気飲食店、コンサート券交換などの列を、本人の代わりに待つサービスがアプリになった。インドネシアのdetikXが2026年4月に取材したAntriin.idである。利用者は列の種類、場所、希望時間を入力し、近くのパートナーが現場で物理的に順番を守る。チャット画面で進み具合を確認でき、病院なら1時間3万ルピアから、それ以外は4万ルピアから。運営側には首都圏で約200人のパートナーがいた。
創業者は、人気店だけでなく公共サービスや医療施設の列も現地で観察し、場所ごとに手順を調整したという。依頼が病院Aで2時間なら、パートナーは原則2時間その列に立つ。15分を超える遅刻には報酬の減額、時間超過には追加料金があり、待つ時間が明示的な労働単位へ変換されている。ある利用者は家族との外食で2度使い、自分で並ばずに済んだと話した。
代理人に順番を譲れるかどうかは、施設や列の規則に左右される。それでもこの事例が示すのは、都市の行列が単なる不便から市場へ変わったことだ。アプリが売るのは優先入場ではなく、列の中で失われる時間を他者の時間で置き換える仕組みである。行列そのものは消えない。誰がそこに立つかだけが変わる。
