1997年1月の東京。銀座の博品館トイパークでは、前日に長時間並んで引換券を得た人々が、翌日の日曜日に再び現れた。目当ては、小さな卵の形をした電子玩具「たまごっち」。AP通信が記録したこの販売では、数百人が引換券を持って店に集まった。列に並んで終わりではない。前日に並んだことを、翌日ようやく商品に交換する仕組みだった。
1996年11月23日に発売されたたまごっちは、画面の中の生き物に餌をやり、世話をする遊びを持ち歩ける形にした。操作するのはボタン三つ。放っておくと育ち方が変わるという小さな責任が、学校にも会社にも持ち込まれた。1997年1月の報道では、子どもだけでなく大人も店頭にいた。購入した27歳のプログラマーは、職場の同僚がまだ持っていないことを誇らしく思う、と話している。
熱狂が生まれたことと、どの店でも毎日同じだけ並んだことは別だ。だが少なくとも、この日の博品館については、引換券を取るための前日の待ち時間と、受け取りに訪れる翌日の人の集まりが同時代の記事に残っている。さらに2006年のITmediaによるバンダイへの取材では、ブームの最盛期には長いところで2,000〜3,000人に達する行列があったと説明されている。数字は特定店舗のこの日の人数ではなく、当時の流行全体についてのメーカー側の回想として読む必要がある。
この玩具のおかしさは、手に入れたら終わりではないところにある。並んだ先でようやく手にしたのは、今度は持ち主に世話を要求する存在だった。人間がたまごっちを待ち、そのたまごっちが餌を待つ。二つの「待つ」が、1990年代の小さな画面の内と外で重なっていた。
たまごっちは手のひらの中で世話を待つ玩具だったが、発売時には人間の方が店頭で順番を待った。仮想の生き物を育てる時間は、商品を手に入れる現実の列から始まった。
