コミックマーケット105の公式会場案内図には、展示ホールや駅だけでなく、東地区と西南地区それぞれの「アーリー入場」と「午前入場」の待機列が描かれている。午前入場のリストバンド保有者は東、西南のどちらにも並べる。QRチケット交換所は8時から12時30分までと、それ以降で位置が分かれ、案内図には「時間帯・最後尾の位置により迂回路」とまで記されている。最後尾は地図上の固定設備ではなく、当日の混雑で動く運用対象なのである。
公式の海外参加者向け案内は、コミケを一日約20万人が参加する大規模で混雑した催事と説明する。深夜から屋外で待つことは禁止され、始発以降に来場するよう求められる。初心者には長い列を避けるため正午ごろの到着を勧め、列を離れる際に荷物で場所を確保しないよう注意している。2019年のコミックマーケット97では会場縮小に伴い日別の入場リストバンドが導入され、現地販売の列が長くなる可能性も告知された。
巨大な列を動かす技術は、一本の蛇行柵に全員を詰め込むことではない。到着時間、入場資格、目的地区を先に分け、駅から受付までの歩行経路を設計し、最後尾が動けば迂回路も変える。参加者が待っているのは同じイベントへの入場でも、地図上では複数の列として扱われる。コミケの案内図は、行列が「人の集まり」ではなく、都市の一部を一時的に組み替える交通システムであることを示している。 1975年の第1回は32サークル、約700人だった。公式案内が紹介するこの規模から、数十年後には3万以上のサークルと一開催50万人規模へ成長した。待機列の地図化は、催事の成功に付随した現象ではなく、規模の拡大を成立させる条件になった。
